
各疾病とフード選び(後編:心臓病・腎臓病・糖尿病・内分泌疾患とフード) 〜「食べること」が治療の一部になる病気たち〜
三浦市、横須賀市の皆さんこんにちわ。結局今月はほとんど雨の月になってしまいましたね。台風25号の被害は大きく被害に遭われた皆さまの1日でも早い回復を祈るばかりです。
さて前編では消化器・皮膚・泌尿器のトラブルについてお話ししました。後編では、当院が特に力を入れている心臓病を中心に、腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症といった、フード管理が治療そのものに直結する病気についてお話しします。
これらの病気は、いずれも「薬を飲んでいれば食事は今まで通りでよい」というものではなく、フードの内容そのものが治療の重要な一部になります。だからこそ、自己判断で切り替えるのではなく、診断に基づいて獣医師と一緒に決めていくことが欠かせません。
心臓病:ナトリウム制限とタウリン・EPA/DHAの役割
心臓病、特に慢性の心不全が進行した子では、食事管理が症状のコントロールに大きく関わってきます。中心となる考え方は「ナトリウム(塩分)の制限」です。ナトリウムの摂りすぎは体内に水分を溜め込みやすくし、心臓への負担や肺水腫のリスクを高めるため、心疾患用のフードはナトリウム量が抑えられて設計されています。
また、タウリンやL-カルニチンといったアミノ酸、EPA・DHAなどのオメガ3系脂肪酸は、心筋の健康維持や抗炎症作用の観点から配合されていることが多く、特に猫では食事性タウリン不足が拡張型心筋症(DCM)の一因になることが知られているため、猫用の総合栄養食がきちんとタウリンを含んでいるかどうかは重要なポイントです。
もう一つ注意していただきたいのが、心臓病が進行すると「心臓性悪液質」と呼ばれる、筋肉量が落ちて痩せていく状態が起こることがある点です。この段階では、むしろ十分なカロリーとたんぱく質を確保して体重・筋肉量を維持することが優先される場合もあり、「心臓病だからとにかく塩分を減らせばよい」という単純な話ではなくなってきます。ステージによって食事の考え方が変わる病気だからこそ、心エコーなどでの評価と合わせて、その時々に合ったフードを一緒に見直していきましょう。
腎臓病(慢性腎臓病・CKD):たんぱく質・リンの調整
以前のブログ記事でも取り上げた慢性腎臓病(CKD)は、特に猫で頻度の高い病気です。腎臓病用のフードは、たんぱく質量やリンの含有量を調整し、腎臓への負担を減らすことを目的に設計されています。
一方で、たんぱく質を制限しすぎると、特に高齢の猫では筋肉量の減少や体重減少を招くこともあるため、腎臓病用フードへの切り替えはステージや状態を見ながら段階的に行うのが基本です。急に切り替えて食べなくなってしまっては本末転倒ですので、切り替えのペースについても診察時にご相談ください。
糖尿病:炭水化物量と食事のタイミング
糖尿病の管理では、血糖値の急激な変動を抑えることが目標になります。フードの面では、炭水化物(糖質)の量を抑えたものや、消化吸収がゆるやかになるよう食物繊維が配慮されたものが選ばれることが多く、特に猫では低炭水化物・高たんぱくのフードが血糖コントロールに有利とされています。
また、インスリン治療を行っている場合は、フードの量だけでなく「与える時間」もインスリンの効き方と密接に関わってきます。食事とインスリン投与のタイミングがずれると、血糖値が安定しにくくなることがあるため、フードの種類・量・与える時間の3つをセットで管理していく必要があります。この点は、以前の糖尿病シリーズでもお伝えした通りです。
甲状腺機能亢進症:カロリーとヨウ素のコントロール
猫に多い甲状腺機能亢進症では、代謝が過剰に高まることで、よく食べているのに痩せていくという状態が見られます。治療法は投薬・食事療法・外科・放射性ヨウ素治療などいくつかありますが、食事療法を選択する場合は、ヨウ素の含有量を厳密に制限した専用のフードのみを与える必要があります。
ここで注意したいのが、ヨウ素制限食による治療を行う場合、その子が口にするものをその専用フードだけに限定しなければ効果が得られないという点です。トリーツはもちろん、他の猫のフードを誤って食べてしまう多頭飼育のご家庭では、特に注意が必要です。以前のブログでも触れた通り、この病気は診断や治療方針の選択も含めて、しっかりとした検査に基づいて進めていく病気です。
後編のまとめ
心臓病・腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症は、いずれも「フードが治療の一部」になる病気です。ステージや状態によって最適な栄養バランスが変わっていくため、一度フードを決めたら終わりではなく、定期的な検査と合わせて見直していくことが、これらの病気と長く付き合っていくコツになります。
こんな時はご相談ください
- 心臓病と診断された、または心雑音を指摘されたことがある
- 腎臓病用フードへの切り替え時期やペースに悩んでいる
- 糖尿病治療中で、食事とインスリンのタイミングを見直したい
- よく食べるのに痩せてきた、多頭飼いで誤食が心配
前編・後編を通して、疾病ごとにフードの考え方が大きく異なることをお伝えしてきました。次回はいよいよ最終回、「ダイエットはこんなに大変」というテーマで、フードとダイエットセミナーの内容にもつながるお話をしていきます。