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シン・エコー

心臓病症例報告①

症例報告|無症状だが、無料心エコー健診で早期発見し15ヶ月後に治療開始し長期維持している症例

横須賀三浦の皆さんこんにちわ 今日は心臓エコー検査を駆使した当院の強み、循環器の症例報告になります。それではどうぞ

症例情報

項目内容
動物種
品種トイプードル
年齢・性別発見時8歳10ヶ月・去勢雄
初診(発見)時期2023年12月

Q&A

Q1. どのような経緯で僧帽弁閉鎖不全症(MR)が見つかったのですか?

2023年12月、アレルギー治療のためにご来院されました。臨床症状は全くなく、とてもお元気な状態でしたが、健康診断の一環として実施している無料心臓エコー検査を受けていただいたところ、僧帽弁閉鎖不全症が確認されました。

心エコー所見(2023/12/7):左心房(LA)16.3mm/左心室(LV)32.1mm/僧帽弁血流速度E波 85cm/s

臨床症状がなく、心臓への負担もまだ許容範囲内だったため、この時点では治療を開始せず、定期的な経過観察とすることにしました。

📷 エコー画像挿入予定(2023/12/7)※エコー機買い替えのため画像消失 代替えでエコー画像2025/01/16を使用Q3部分に挿入

Q2. 症状がないのに、なぜすぐに治療を始めなかったのですか?

MRをはじめとする心臓病の治療は、一度始めると基本的に生涯にわたって継続するものです。そのため当院では、エコー検査で心臓に明らかな負担(心拡大など)が確認される段階に達するまでは、無理に投薬を開始せず、定期的なモニタリングで経過を見守る方針をとっています。

症状がないことは、必ずしも「治療が不要」を意味しません。今回のように無症状の段階で早期発見できていたからこそ、その後の変化を見逃さず、適切なタイミングで治療開始の判断につなげることができました。

Q3. その後、どのような経過で治療開始に至ったのですか?

約1年後の2025年1月、定期検診で心エコー検査を再度実施したところ、心臓全体に拡大が見られ、心臓への負担が基準を超えていることが確認されました。

心エコー所見(2025/01/16):LA 21.6mm/LV 30.3mm/E波 105.1cm/s

左心房内に僧帽弁逆流による血液の乱流がモザイクとして映っています。

逆流した血液と肺から普通に送られてくる血流が合流し左心房がパンパンに膨れます。

左心室は充分量の血液を循環に回せないので一生懸命収縮運動を頑張ります。

心臓の負担を一番如実に表すのがE波です

治療開始をご提案しましたが、目立った臨床症状がなかったことから、飼い主様はお薬の開始に迷いを感じておられました。そこで、治療開始のタイミングについて循環器専門医・見上先生にご判断いただくことになりました。

2025年3月、見上先生による心エコー検査・レントゲン検査が行われ、治療開始が決定しました。

心エコー所見(2025/03/17):LA 23.5mm/LV 35.8mm/E波 96.0cm/s

強心剤(ピモベンダン)1日2回の投与を開始し、2ヶ月後に再診としました。

📷 エコー画像挿入予定(2025/03/17・治療開始時)

経過観察15ヶ月目とうとうE波が100cm/sを超えてきました

左心房、左心室とも循環不全から肥大し膨れています

Q4. 治療開始後の経過はいかがでしたか?

治療開始後、心臓の状態はしばらく安定して維持されていました。しかし2025年11月の定期検診で、心臓への負担が大きく悪化していることが判明しました。

心エコー所見(2025/11/28):LA 23.3mm/LV 38.2mm/E波 117.2cm/s

これまでは強心剤1種類・1日2回の投与で維持できていましたが、それだけでは不十分と判断し、利尿剤1日2回の追加投与を開始しました。

Q5. 利尿剤を追加されたとのことですが、注意点や追加後の経過は?

利尿剤は心臓を最も楽にしてくれるお薬である一方、腎臓に負担をかけるという特性があります。そのため、利尿剤の追加にあたっては腎機能のモニタリングを並行して行うことにしました。

投与開始から1週間後の腎数値は CRE 1.2/BUN 33 で、腎臓は利尿剤の負荷に十分に耐えられていると判断し、初期用量のまま投与を継続しました。

1ヶ月後の検診では、

心エコー所見:LA 25.3mm/LV 34.1mm/E波 109cm/s

と大きな改善が見られました。以後は1~2ヶ月おきの定期検診を継続しながら、現在まで良好な状態を維持しています。

📷 エコー画像挿入予定(利尿剤追加後・改善時)

E波が120cm/sを超えないようお薬でコントロールします。

150cm/sで肺水腫発症レベルになります!!

左心房の拡大が気管を突き上げ咳が起こるとされていましたが、最新の報告では相関がないとか!?

心エコー所見の推移(まとめ)

検査日LA (mm)LV (mm)E波 (cm/s)備考
2023/12/716.332.185.0発見時(無症状・経過観察)
2025/01/1621.630.3105.1治療開始を提案
2025/03/1723.535.896.0専門医診察・治療開始(ピモベンダン)
2025/11/2823.338.2117.2負担増悪・利尿剤追加
利尿剤開始1ヶ月後25.334.1109.0大きく改善、以後良好に維持

担当獣医師より

無症状の段階で心臓病を発見できたことが、この症例の最大のポイントです。もし健診でのスクリーニングを行っていなければ、発見はもっと遅れ、治療開始時にはすでに心臓への負担がより大きい状態だった可能性があります。

また、「症状がないから様子を見たい」という飼い主様のお気持ちも自然なものです。当院では無理に投薬を急がせるのではなく、専門医の客観的な評価も取り入れながら、納得感を持って治療開始のタイミングを決めていただけるよう努めています。

治療経過の中では、強心剤だけでは管理が難しくなる時期も訪れます。今回のように利尿剤を追加する際は、腎機能への影響を慎重にモニタリングしながら進めることで、心臓と腎臓のバランスを取りつつ、良好なQOLを維持することができました。

この症例から学べること

  • 無症状であっても、心エコー健診が早期発見の鍵になること
  • 症状の有無だけでなく、心エコーの定量的な指標に基づいて治療開始のタイミングを判断することの重要性
  • 強心剤のみでの管理が難しくなった場合、利尿剤の追加が有効な選択肢となること。ただし腎機能のモニタリングが不可欠であること
  • 専門医との連携により、飼い主様にとって納得感のある治療方針の決定が可能になること

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