猫さんの「慢性腎臓病」について ― 知っておきたい症状・検査・治療、そして話題の「AIM」

横須賀三浦の猫さんオーナーのみなさん、こんにちは。
MiU動物病院です。
「うちの子、最近お水をよく飲むようになった気がする」 「体重が少しずつ減ってきている」
そんな変化に気づいたことはありませんか。もしかすると、それは猫さんにとても多い病気、慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)のサインかもしれません。
今回は、猫を飼ったことがある方なら一度は耳にしたことがあるであろうこの病気について、あらためて分かりやすくご説明します。また、最近ニュースでも取り上げられている新薬「AIM」についても、現時点での状況を整理してお伝えします。
慢性腎臓病とは、どんな病気?
腎臓は、血液をろ過して体の中の老廃物を尿として排出する、いわば体の「浄水フィルター」のような臓器です。慢性腎臓病は、この腎臓の機能が数ヶ月〜数年という長い時間をかけて少しずつ低下していく病気です。
猫さんは犬に比べて腎臓病になりやすいと言われており、特に高齢の猫さんでは非常に高い割合でこの病気がみられます。一般的には7歳を過ぎた頃から徐々にリスクが上がり、15歳以上になるとかなり多くの猫さんが何らかの形で腎機能の低下を抱えていると言われています。
原因ははっきりしないことも多いのですが、加齢による自然な機能低下のほか、遺伝的な素因(多発性嚢胞腎など特定の品種にみられるもの)、慢性的な脱水、歯周病、過去の感染や中毒などが関係していると考えられています。
こんな症状が出たら要注意
腎臓は「予備能力」が大きい臓器のため、初期の段階ではほとんど症状が出ません。実は、腎機能の7割前後が失われて初めて症状が現れ始めると言われており、これが早期発見を難しくしている大きな理由です。
飼い主さんが気づきやすいサインとしては、次のようなものがあります。
- 水を飲む量が増えた、おしっこの量が増えた(多飲多尿)
- 体重がじわじわと減ってきた
- 毛づやが悪くなった、毛づくろいをあまりしなくなった
- 食欲が落ちてきた、吐くことが増えた
- 口臭が気になるようになった
- 元気がなく、寝ている時間が増えた
これらは老化のせいと見過ごされやすい変化でもあります。「歳のせいかな」と感じたときこそ、一度検査を受けていただくことをおすすめします。
診断の流れ
当院では、以下のような検査を組み合わせて腎臓の状態を評価します。
- 血液検査:クレアチニン、BUN(尿素窒素)、SDMAといった数値から腎機能の低下を確認します。SDMAは比較的早期の変化を捉えやすい指標として近年注目されています。
- 尿検査:尿の濃さ(比重)やタンパクの漏れ具合をみることで、血液検査だけでは分からない情報が得られます。
- 血圧測定:腎臓病の猫さんは高血圧を合併しやすいため、あわせてチェックします。
- 超音波検査:腎臓の大きさや形、結石の有無などを確認します。
これらの結果をもとに、国際的な基準(IRISステージ分類)に沿ってステージ1〜4に分類し、進行度に応じた治療方針を立てていきます。
治療の考え方
慢性腎臓病は、残念ながら現在の標準治療では「完治」を目指す病気ではなく、進行をできるだけ緩やかにし、猫さんが快適に過ごせる時間を延ばすことを目標に治療を行います。
- 食事療法:リンやタンパクを制限した療法食は、進行を緩やかにする効果が最もよく確認されている方法のひとつです。
- 飲水環境の工夫:常に新鮮な水を飲めるようにする、複数箇所に水飲み場を用意するなど、脱水を防ぐ工夫も大切です。
- 内服薬:血圧を下げる薬、タンパク尿を減らす薬、吐き気を抑える薬などを、猫さんの状態に合わせて使います。
- 皮下補液:脱水が強い場合には、自宅や通院で皮下点滴を行うこともあります。
ステージが進んでいても、できることは必ずあります。「もう手遅れ」と諦めず、その子に合ったケアを一緒に考えていきましょう。
最近話題の「AIM」について
ここ数年、メディアでもたびたび取り上げられている「AIM」という言葉を耳にした飼い主さんも多いのではないでしょうか。
AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)は、東京大学の宮﨑徹先生の研究グループが発見したタンパク質で、体の中の老廃物を掃除する働きを持つことが分かっています。犬や人ではこのAIMが正常に働くのに対し、猫では血液中でうまく働かない性質があり、これが猫が腎臓病になりやすい一因ではないかと考えられています。この発見をもとに、AIMの働きを補う新薬の開発が進められてきました。
2026年に入り、この新薬「FeliAIM(フェリエイム)」について大きな動きがありました。
- 治験が終了し、2026年4月に農林水産省へ動物用医薬品としての製造販売承認申請が行われました。
- 治験ではCKDステージ3の猫さんを対象に、進行の停止や食欲・活動量の改善といった効果が報告されています。
- 承認審査には通常数ヶ月〜1年程度かかるとされており、2026年内、あるいは2027年にかけての実用化が見込まれていますが、審査の進み具合によって時期は前後する可能性があります。
大切なのは、AIM新薬は壊れてしまった腎臓の組織を元通りに再生する薬ではないという点です。あくまで病気の進行を抑えたり、体の状態を底上げしたりすることを目指すものであり、これまでの食事療法や定期検査の重要性が変わるわけではありません。また、ステージが早いほど効果を発揮しやすいと考えられているため、早期発見のための定期健診はこれまで以上に意味を持つとも言えます。
まだ承認前の段階ですので、当院でも詳しい情報が入り次第、あらためてお伝えしていきますね。

最後に
慢性腎臓病は、多くの猫さんが向き合うことになる病気です。だからこそ「うちの子はまだ大丈夫」と思わず、7歳を過ぎたあたりから定期的な血液検査・尿検査を習慣にしていただくことが、早期発見への一番の近道です。
気になる症状がある方はもちろん、「うちの子は今どのくらいの状態なんだろう」と気になった方も、お気軽にご