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猫さんの歯肉炎について

横須賀三浦のみなさんこんにちは。今日は猫さんの歯肉炎についてお話しします。とにかく痛そう!かわいそう!と私のイメージのこの病気ですが、それ故治療後の改善が著しく、食べれるようになって体重を取り戻していく様子がとても嬉しくもあります。

猫さんの歯肉炎について ― 気づきにくいけれど、QOLを大きく下げる病気

はじめに

「最近、ちょっと痩せてきたかな」「グルーミングをあまりしなくなった」「カリカリを残すようになった」――そんな変化に気づいたとき、まず思い浮かぶのは内臓の病気かもしれません。でも、実はお口の中に原因が隠れていることがとても多いのです。

今日は猫さんに多い「歯肉炎」についてお話しします。歯肉炎は、それ単体では命に関わる病気ではありませんが、進行すると食事のたびに強い痛みを伴い、猫さんの生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。早期に気づいてあげることが、なによりの優しさです。

見逃さないで!こんな症状の連鎖が起きています

歯肉炎が進行すると、次のような症状が連鎖的に現れることが多くあります。

  • 歯肉の痛み:口の中が赤く腫れ、触れたり噛んだりすると痛む
  • 食欲不振:痛みでフードを食べたがらない、片側だけで噛む、カリカリを避けてウェットフードばかり欲しがる
  • 削痩(削せ):食べる量が減り、体重が落ちてくる
  • グルーミング不足:口の中が痛いので毛づくろいの回数が減る
  • 毛並みの劣化:グルーミング不足により毛がパサつき、ツヤがなくなる

このように、「痛み→食欲低下→痩せる→毛づくろいをしなくなる→毛並みが悪くなる」という一連の流れではっきりと現れるのが歯肉炎の特徴です。猫さんは痛みを隠すのが得意な動物なので、飼い主さんが気づく頃には、すでにこの連鎖が進んでいることも少なくありません。

歯肉炎の主な原因

猫さんの歯肉炎には、大きく分けて2つのタイプがあります。

1. 歯周病による歯肉炎

もっとも多いのがこのタイプです。歯垢(プラーク)の中の細菌が歯と歯肉の境目に炎症を起こし、放置すると歯石となって炎症がさらに進みます。進行すると歯を支える組織(歯周組織)が壊され、歯がぐらついたり、抜けてしまったりすることもあります。

毎日の歯みがきケアが難しい猫さんでは、年齢を重ねるごとに歯石が蓄積し、歯周病が進みやすくなります。

2. 猫特有の「慢性歯肉口内炎(FCGS)」

猫さんには、歯周病とは別に「慢性歯肉口内炎(Feline Chronic Gingivostomatitis、略してFCGS)」という、猫さんに特有の病気があります。

これは、歯垢に対して免疫が過剰に反応してしまうことが関係していると考えられている病気で、歯の周りだけでなく、頬の内側や喉の奥(口峡部)まで、口の中全体が真っ赤に腫れあがるのが特徴です。歯周病よりも痛みが強く、食欲不振やよだれ、口臭が顕著に現れやすい傾向があります。

歯石がそれほど多くないのに口の中全体が炎症を起こしている場合や、一般的な歯石除去だけでは改善しない場合には、このFCGSを疑います。猫エイズウイルス(FIV)や猫カリシウイルスなどの感染が関与している可能性も指摘されており、原因がひとつに限定できない、やや厄介な病気です。

こんな様子が見られたら要注意(レッドフラッグ)

以下のサインが見られたら、早めの受診をおすすめします。

  • フードを欲しがるのに、口に運んだ後に食べるのをやめてしまう
  • カリカリを避けてウェットフードしか食べない、または丸呑みしている
  • 口を触られるのを嫌がる、顔を触ると鳴く
  • よだれが増えた、よだれに血が混じる
  • 口臭が急に強くなった
  • 片方の頬だけ腫れている
  • 毛づくろいをしなくなり、毛並みがパサついてきた
  • 体重がここ数週間〜数ヶ月で減ってきた

特に「食べたい様子はあるのに食べられない」というのは、お腹の病気ではなく口の中の痛みを示す代表的なサインです。見逃さないようにしてあげてください。

治療法について

歯肉炎の治療は、原因とタイプによって異なります。

歯周病による歯肉炎の場合

  • スケーリング(歯石除去)・ポリッシング:全身麻酔下で歯石を除去し、歯の表面を滑らかに磨き上げます。歯肉炎の段階であれば、これだけで症状が大きく改善することも多くあります。
  • 抜歯:歯周組織の破壊が進み、歯がぐらついている場合には抜歯が必要になることもあります。
  • 自宅でのデンタルケア:歯みがきや歯科用デンタルフードなどで、歯石の再付着を予防します。

慢性歯肉口内炎(FCGS)の場合

FCGSは内科的治療だけでは再発を繰り返すことが多く、根本的な治療として全臼歯抜歯、あるいは全顎抜歯(炎症の原因となる歯垢が付着する歯そのものを取り除く治療)が選択されることがあります。「歯を全部抜くなんて」と驚かれる飼い主さんも多いのですが、抜歯後は多くの猫さんで痛みが劇的に軽減し、食欲が戻り、毛づくろいができるようになることが報告されています。

抜歯に踏み切れない場合や抜歯後も炎症が残る場合には、消炎鎮痛剤やステロイド、インターフェロン製剤などを併用しながら症状をコントロールしていきます。ただし、これらはあくまで対症療法であり、長期的なコントロールには抜歯が有効な選択肢となることが多いです。

いずれのタイプであっても、自己判断での経過観察は猫さんの苦痛を長引かせてしまいます。「年だから仕方ない」「ご飯は食べているから大丈夫」と思わず、まずは口の中を見せていただくことが大切です。

おわりに

歯肉炎は、痛み→食欲不振→削痩→グルーミング不足→毛並みの劣化、という形ではっきりと猫さんのQOLを下げてしまう病気です。一方で、原因に応じた適切な治療によって、驚くほど猫さんが元気を取り戻すことも多い病気でもあります。

「最近ちょっと痩せた」「毛づやが悪い」と感じたら、ぜひ一度お口の中をチェックしてみてください。気になる様子があれば、遠慮なく当院までご相談くださいね。