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つぶやき

7歳以上の猫さんは甲状腺ホルモンを測っておきましょう!

猫さんの甲状腺機能亢進症について

「うちの子、最近やけに元気なんです」

横須賀三浦の猫さん飼い主さんこんにちわ。

診察室でこの言葉を聞くと、私たち獣医師は少し身構えます。

「食欲が旺盛になった」「よく鳴くようになった」「若い頃みたいに走り回る」――飼い主さんにとっては嬉しい変化に見えるかもしれません。ですが、シニア期の猫さんにこうした変化が見られたとき、実は甲状腺機能亢進症という病気が隠れていることが少なくありません。

今日は、診断がついてから振り返ると「あれが症状だったのか」と気づく方が多い、この病気についてお話しします。

甲状腺機能亢進症とはどんな病気?

喉の部分にある甲状腺から、体の代謝をコントロールするホルモン(甲状腺ホルモン)が過剰に分泌されてしまう病気です。多くは甲状腺の良性の腫大(過形成や腺腫)が原因で、10歳以上のシニア猫さんに多く見られます。

代謝が異常に活発になることで、体中の臓器に負担がかかっている状態が続きます。

気づきにくい理由 ― 「元気」に見えてしまう症状たち

この病気が厄介なのは、初期の症状が一見「悪くなっている」ようには見えないところです。

食欲は増えているのに、痩せていく

食べる量は増えている、あるいは変わっていないのに、体重だけがどんどん減っていく。「よく食べるから大丈夫」と思われがちですが、これは代謝が過剰に亢進し、摂取したエネルギーを消費しきってしまっているサインです。

やたらと活発になる、よく鳴くようになる

夜中に大きな声で鳴き続ける、じっとしていられず落ち着きがない、若い頃のように動き回る。飼い主さんは「若返った」「元気になった」と感じることが多いのですが、これは神経の興奮性が高まっている状態であり、決して良い変化ではありません。

嘔吐や下痢の回数が増える

消化器への負担から、吐く回数が増えたり、便が緩くなったりすることがあります。「年のせいで胃が弱くなったのかな」と見過ごされてしまうケースをよく見かけます。

毛づやが悪くなる、毛玉を吐きやすくなる

被毛の状態は栄養状態と密接に関わっています。ツヤがなくなりパサついてきた、毛玉を吐く頻度が増えたという変化も、体重減少と合わせて見られることが多い所見です。

心拍数の増加、呼吸が速い

甲状腺ホルモンは心臓にも直接作用します。安静にしていても心拍数が高い状態が続くと、心臓に負担がかかり、二次性の心疾患(肥大型心筋症様の変化)を引き起こすこともあります。

これらはひとつひとつを見ると「年齢のせい」「性格の変化」で片付けられてしまいがちです。ですが、複数が同時期に重なって見られたときは、一度血液検査を受けていただくことを強くお勧めします。

診断の方法

血液検査で甲状腺ホルモン(T4)の値を測定することで、比較的簡単に診断がつきます。当院では、シニア期(7歳以降)の健康診断の際にはこの項目を含めることをお勧めしています。症状が微妙な段階で数値の異常が先に見つかることも多く、早期発見につながります。

治療の選択肢

治療法はいくつかあり、猫さんの状態やご家族のご希望に応じて選択します。

  • 内科治療(お薬):抗甲状腺薬を毎日投与し、ホルモンの分泌を抑える方法。最も一般的で、多くの場合まずはここから始めます。
  • 食事療法:ヨウ素制限食を用いて、ホルモン合成に必要なヨウ素の摂取を抑える方法。他の子と食事を分ける必要があります。
  • 外科手術:甲状腺を摘出する方法。麻酔のリスクを考慮する必要があります。
  • 放射性ヨウ素治療:根治的な治療法ですが、対応できる施設が限られます。

どの治療法にもメリット・デメリットがあり、猫さんの年齢や併発疾患(特に腎臓の状態)を踏まえて相談しながら決めていきます。甲状腺機能亢進症の治療によって代謝が正常化すると、隠れていた腎臓の負担が表面化することもあるため、治療開始後もこまめなモニタリングが大切です。

飼い主さんへ ― 「なんだか元気」を、ぜひ一度お話しください

シニア猫さんの「よく食べる」「よく動く」「よく鳴く」は、決して悪いことではありません。ですが、それが急激な変化であったり、体重減少を伴っていたりする場合は、ぜひ一度お聞かせください。

「歳のせいかな」「性格が変わったのかな」と思っていたことが、実は治療で改善できる病気だった、というケースを私たちはこれまで何度も経験してきました。早期に見つかれば見つかるほど、体への負担も少なく、穏やかな治療が可能になります。

気になる変化があれば、些細なことでも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。