【糖尿病シリーズ①】糖尿病のメカニズム ― 人も犬も猫も、体の中で何が起きているの?
はじめに
「糖尿病」という言葉は、人間の病気として広く知られていますが、実は犬や猫にも起こる病気です。このシリーズでは、糖尿病をさまざまな角度から掘り下げていきます。第1回は「そもそも糖尿病とはどういう状態なのか?」というメカニズムの基礎をお伝えします。人医療の知識をベースにしながら、犬・猫との共通点や違いも見ていきましょう。
血糖値とインスリンの関係
私たちが食事をすると、食べ物に含まれる炭水化物が消化・吸収されて「ブドウ糖(グルコース)」に変わり、血液中に入ります。これが「血糖値」です。
血糖値が上がると、膵臓(すいぞう)の「β(ベータ)細胞」という細胞がインスリンというホルモンを分泌します。インスリンは「鍵」のような役割を果たし、細胞の表面にある「鍵穴(インスリン受容体)」にはまることで、細胞がブドウ糖を取り込めるようになります。
つまり、インスリンがなければ、血液中にブドウ糖がいくらあっても細胞はエネルギーとして使えないのです。

糖尿病とは何か?
糖尿病とは、このインスリンの働きに何らかの問題が生じ、血糖値が慢性的に高い状態(高血糖)が続く病気です。大きく2つのタイプに分けられます。
● 1型糖尿病(インスリン分泌不全型)
膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンをほとんど作れなくなるタイプです。自己免疫疾患や炎症が原因になることが多く、インスリンの補充(注射)が必須になります。
● 2型糖尿病(インスリン抵抗性型)
インスリンは分泌されていても、細胞側がうまく反応できない(抵抗性がある)タイプです。肥満や生活習慣が大きく関与し、人間では最も多い型です。
犬・猫ではどうなの?
ここが面白いところです。犬の糖尿病は1型に近いタイプが多く、膵臓が障害されてインスリンをうまく作れなくなるケースが中心です。そのため、犬の糖尿病治療にはインスリン注射がほぼ必須となります。
一方、猫の糖尿病は2型に近いタイプが多く見られます。肥満や高炭水化物の食事との関連が指摘されており、早期に適切な治療と食事管理を行うと、一部の猫では「寛解(糖尿病が治まった状態)」に至ることもあります。
高血糖が続くとどうなる?
インスリンがうまく機能しないと、細胞はエネルギー不足になります。すると体は「飢えている」と判断して、脂肪や筋肉を分解してエネルギーを得ようとします。
この状態が続くと、以下のような症状や合併症が現れてきます。
- 多飲・多尿:血液中のブドウ糖が増えすぎると、尿に糖が漏れ出し、水分も一緒に排泄されるため、のどが渇いて水をよく飲むようになります。
- 体重減少・食欲増加:細胞がエネルギー不足になるため、食べても痩せていくことがあります。
- 白内障(犬)・神経障害・腎臓病:長期的な高血糖はさまざまな臓器にダメージを与えます。
まとめ
糖尿病の本質は「インスリンの鍵が機能しなくなり、細胞がエネルギーを取り込めなくなる状態」です。人間も犬も猫も、この基本的なメカニズムは共通しています。ただし、どのタイプが多いか、どんな治療が必要かは種によって異なります。
次回は「糖尿病治療の歴史」として、インスリンが発見される以前から現代の治療法まで、医療の進歩を振り返っていきます。動物医療がどのように人医療の恩恵を受けてきたかも、ぜひご注目ください。
このシリーズは、糖尿病と診断されたペットの飼い主様や、病気への理解を深めたい方に向けてお届けしています。治療の判断は必ず担当獣医師にご相談ください。
余談
実は、、、身の上話になりますが、私の父が糖尿病でして、去年は9種類の薬を内服していても、体重減少、食欲不振がおさまらずどんどん衰弱していきました。明らかにインスリン不足であることは獣医の私の目からも明らかだったので、何度もお医者さんに相談して一刻も早くインスリン治療を開始するよう訴えたのですが。その時に驚いたのが、「医者がまだだと言っている。向こうには考えがあるに違いない。」というあまりにも人任せな患者の返事でした。
”自身の生命が危機的状況でなお、自分の病気の治療を人任せにするのか!?”
「これが保険医療のデメリットかあ〜(医療費が安いため患者が自分の病気、治療に関心を持たない)と実感したものです。」
結局父はガリガリになって横須賀共済に入院、そこからインスリン治療が始まり快方に向かい今現在はかなり回復しました。
お医者さんや獣医は、あくまでも仕事で治療しているに過ぎません。あなたやあなたのワンちゃん、猫さんの命と病気の治療を何よりも優先して大事に考えてくれているとは、考えない方が良いと思います。家族を守るためにはまず飼主さんが病気に健康に関心を持つことが重要だと言いたい。
特に糖尿病は付き合っていく病気。動物病院をうまく利用し続けていく必要があります。飼主さんの理解なしに維持が成り立たない病気の代表です。
だから糖尿病に関してはじっくりとこのブログでも取り上げていきたいと考えています。
MiU動物病院 院長 冨宅