ライフステージとフードの関係性 〜「ずっと同じフード」が正解とは限りません〜

横須賀三浦の皆さんこんにちわ。前回「フード選びのコツ」では、フードは個体差に合わせて選ぶこと、そして健康維持を第一の目的として選ぶことをお伝えしました。今回はその延長として、「年齢によって必要な栄養は変わる」というお話をしたいと思います。
わんちゃん・猫さんは、成長のスピードも、必要なエネルギー量も、年齢とともに大きく変化していきます。同じ子であっても、子犬・子猫の頃と、シニアになってからとでは、体が必要としているものはまったく違います。「ずっと気に入っているから」という理由だけで同じフードを与え続けるのではなく、ライフステージに応じて見直していくことが、健康維持にはとても大切です。
成長期(子犬・子猫期):体づくりのための「高栄養密度」
生後まもない時期は、骨格・筋肉・内臓などの体の組織が急速につくられていく時期です。体重あたりで必要とするエネルギーは成犬・成猫に比べてかなり多く、成長期用(子犬用・子猫用)のフードは、その分栄養密度が高く設計されています。
ここで気をつけていただきたいのが、成犬用・成猫用のフードを早い時期から与えてしまうケースです。良かれと思って早めに切り替えても、この時期に必要な栄養量を満たせず、成長に影響が出てしまうことがあります。逆に、成長期を過ぎても子犬用・子猫用フードを与え続けると、今度はカロリー過多で肥満につながることもあります。
なお、犬は犬種によって成長期の長さが異なります。小型犬は比較的短期間で成犬期に入りますが、大型犬・超大型犬は骨格が大きくなる分、成長期が1年半〜2年程度と長くなる傾向があります。愛犬の犬種・体格に合った成長期フードの期間についても、気になる場合は診察時にご相談ください。
成犬期・成猫期:「維持」のためのバランス栄養
成長が落ち着いた後は、体重や体調を「維持」することが栄養管理の中心になります。一般的に犬で1歳前後、猫で1歳前後から、7〜8歳頃までがこの時期にあたります。
この期間は比較的トラブルが起きにくい時期ではありますが、だからこそ油断は禁物です。室内飼育で運動量が少ない子、避妊・去勢後で代謝が落ちている子などは、成犬用・成猫用フードでも量やカロリーの見直しが必要になることがあります。前回お伝えした「体重の変化」の定期チェックは、まさにこの時期の管理に直結します。
避妊・去勢後に太りやすくなる理由
成犬期・成猫期の入り口でもう一つ知っておいていただきたいのが、避妊・去勢手術後は太りやすくなるということです。「手術をしたら太った」というお話はよく耳にされると思いますが、これは偶然ではなく、いくつかの理由が重なって起こる、ある意味自然な変化です。
まず、性ホルモンの分泌がなくなることで、実際に消費するエネルギー量そのものが減ります。一方で食欲は逆に増える傾向があり、「消費は減るのに食欲は増える」という組み合わせが、体重増加につながりやすい状態をつくります。手術後は、それまでと同じ量のフードを与え続けているだけで、カロリー過多になってしまうことがあるのです。
もう一つの理由が、行動面の変化です。特に未去勢の雄猫は、発情期の雌猫の存在を感じ取ると、食事そっちのけで気もそぞろになったり、縄張りを見回ったり、追いかけたりと、かなりの運動量とエネルギーを使って過ごしています。去勢によってこうした発情行動がなくなると、それまで自然に消費されていたエネルギーがまるごと不要になり、その分がそのまま体に蓄積しやすくなります。「性格が落ち着いた分、動かなくなった」という変化が、体重にもそのまま表れてくるイメージです。
これは雄猫に限った話ではなく、避妊・去勢を受けた犬や雌猫でも程度の差はあれ同様の傾向が見られます。手術後は、フードの量を体重の変化に合わせて見直したり、避妊・去勢後用に調整されたフードへの切り替えを検討したりすることをおすすめします。「手術をしたら急に太ってきた」という場合は、それが異常なことではなく、よくある変化だということをまず知っておいていただければと思います。気になる場合は、適正な給与量について診察時にぜひご相談ください。
シニア期:年齢とともに変わる「配慮点」
一般的に7〜8歳頃を境に、シニア期(高齢期)への移行を意識し始める時期に入ります。老化のスピードには個体差が大きいため、「何歳になったら必ず切り替える」という一律の基準はありませんが、以下のような変化が見られたら、フードの見直しを検討するサインです。
- 以前より痩せやすくなった、または反対に太りやすくなった
- 硬いフードを残す、食べるスピードが落ちた(歯や顎の変化)
- 動きが緩やかになり、運動量が明らかに減った
- 内臓の状態(腎臓・心臓など)に配慮が必要と診断された
シニア期用フードは、カロリーやたんぱく質量の調整に加えて、関節や内臓機能への配慮がなされている製品も多くあります。また、持病がある場合には、シニア用フードではなく療法食への切り替えが必要になることもあります。この判断は自己流で進めず、必ず診察の中で一緒に相談しながら決めていきましょう。
ライフステージが違う子を多頭飼いしている場合
子犬・子猫と成犬・成猫、シニアの子を同時に飼育しているご家庭では、フードを取り違えて食べてしまうことがあります。成長期の子が成犬用フードを食べ続けると栄養不足に、逆に成犬・シニアの子が成長期用フードを食べ続けるとカロリー過多になりやすいため、食事の時間や場所を分けるなどの工夫をおすすめします。
こんな時はご相談ください
- フードの切り替え時期に自信が持てない(特に大型犬の成長期の見極め)
- シニア期に差しかかり、今のフードのままでよいか不安がある
- 持病があり、療法食への切り替えを検討している
- 多頭飼いで、フードの取り違えが心配
フードは「一度決めたら一生同じもの」ではなく、その子の年齢や体の変化に合わせて見直していくものです。次回は「トリーツとの付き合い方」について詳しくお話しします。
